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あらゆるものを一口レビュー

【ブックレビュー】「白鯨・Moby-Dick」夢枕獏 評価:☆☆☆

「ジョン万次郎」こと中浜万次郎が、主人公としてハーマン・メルヴィルの「白鯨」に入り込んだような話です。

大きな体と身体能力を持て余し気味だった万次郎が元鯨捕りの半九郎と出会い、成長していく序盤は面白かったです。様々な人との関わりを通して、少年が大人になっていく過程が丁寧に描かれています。

 

その後、万次郎は鯨捕りの仲間に入って漁に出ます。この仲間たちも一癖あるものの、人情味があって良い感じです。「持っている」万次郎が漁に出ると豊漁になるというのも主人公らしい無双感があり、気持ち良いです。

 

しかしあるとき、一行は漂流して無人島に流れ着きます。その無人島で、万次郎はひょんなことから皆とはぐれて海に流され、ピークオッド号という捕鯨船に拾われます。

そこで銛打ちの腕を認められ、仲間として迎え入れられるのですが、ピークオッド号には秘密があり…。

 

と、ここまでは申し分なく面白かったです。

 

で、ここからが「白鯨」の物語と混ざっていく、キモの部分になるのですが…。

これが面白くない。

 

なんかやたら登場人物が多いし、似たようなキャラクターが多いので誰が誰やら分からないし、ストーリーもエイハブ船長が白鯨に執着する姿を延々と描くだけ。最後のモビー・ディックとの闘いも大体予想通りで熱くなれませんし。

時々各キャラクターの過去が描かれるものの、「ふーん」って感じであまり惹かれず。

 

キーとなるエイハブ船長のキャラクターに魅力が無いのが致命的だったのかなと思います。狂気、理性、知性、凄み、先見性などを併せ持つようなカリスマ的な存在として描かれていれば違ったのかも知れません。本作では、ただの頑固で冷静さのないお爺ちゃんなので…。この人に付いて行っちゃ駄目でしょ、って思ってしまいます。

 

最後のオチだけはおおっ、となりましたが、そこまでのメイン部分がダレてしまった感じで残念でした。