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あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結)】「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」西義之 評価:☆☆☆

悪霊の起こす事件を、地獄の使者を使役する「魔法律」で解決していく2人の話。

世界観がユニークで面白いです。もう少し練られていれば名作だったと思うのですが…惜しい。

六氷(むひょう とおる、ムヒョ)は天才的な魔法律家。魔法律とは、地獄の使者を呼び出して除霊する、魔法のようなもの。

性格に癖のあるムヒョですが、助手の草野 次郎(くさの じろう、ロージー)と共に悪霊に悩まされる人たちを助けていきます。

そんな中、魔法律で人に害をなす禁魔法律家集団「箱舟」と対決することになります。そこにはムヒョのかつての友、円 宙継(まどか そらつぐ、エンチュー)の姿があったのでした…!

 

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引用元:西義之ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」第1巻第1話 集英社、2005年

世界観がユニークで面白いです。そしてそれを支えるのが、悪霊と使者の素晴らしいデザイン。怖くて不気味な中にも可愛さや格好良さがあり、ゾクゾクします。

 

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引用元:西義之ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」第1巻第1話 集英社、2005年

 

また、ムヒョの癖のある見た目と性格、「ヒッヒ」という笑い方などキャラが強烈。他にも裁判官のヨイチやムヒョの師匠ペイジ、魔具師のビコ、ライバルの五嶺エビスなど魅力的なキャラクターが多いです。

 

ただ、大きな難点が2つ。

 

最大の問題は重要なキャラクターに感情移入できないこと。

 

ロージーとエンチューという、主人公のパートナーと最強の敵に感情移入できないのは致命的でした。

 

ロージーは弱虫だけど自ら他人の盾となり、どんな人にも助けの手を差し伸べる優しくて真っ直ぐなキャラ。

 

…にしたかったんだと思います。が、実態は、泣き言しか言わずムヒョに助けを求めるばかり。しかも自分も魔法律家の端くれでありながら全く努力せず、ムヒョの助手として2年も働いているのに魔法律家として常識的なことすら知りません。

 

それでいて、◯◯を助けるんだ!とか自分だってやれるんだと言っては立ち入り禁止の場所に入ったり勝手に魔具を持ち出したりしてピンチになり、またムヒョに助けてもらうという繰り返し。

 

エンチューはそこまで酷くはないものの、ムヒョに恨みを持つ経緯に全く共感できず…。

 

もう一つは世界観の違和感です。

 

「魔法律家」という制度があり書店に本が売られていたり、学生の進路の選択先に出てくるほどなのに、一般人には知られておらずオカルト扱いされています。また、箱舟のメンバーが数年程度でほとんどの魔法律家が足元にも及ばないような禁魔法律家になっているのも納得がいきませんでした。魔法律協会も、ムヒョの足を引っ張ることしかしていないので存在意義がありません。物語的にそういう役回りとして無理矢理作られた印象を受けてしまいます。

 

そういうところで引っ掛かってしまうと、せっかくの世界観に浸りきれなくなってしまうので残念でした。

 

欠点が大きいので個人的には名作とまでは言えませんが、作品全体を覆うダークかつホラーな雰囲気、主人公のキャラクター、悪霊や使者の造形など、唯一無二の魅力があるので一度読んでみるのは悪くないと思います。