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あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結)】「あさひなぐ」こざき亜衣 評価:☆☆☆☆☆

文化系だった女子が高校で薙刀(なぎなた)部に入り、仲間と共に成長していく物語。

部活物の王道ですが、各キャラクターの心情と関係性が深く描かれている傑作。

 

あさひなぐ(1) (ビッグコミックス)

あさひなぐ(1) (ビッグコミックス)

 

 

主人公の東島 旭(とうじま あさひ)は、先輩に半ば騙されるように薙刀部に入部することになります。

中学のときは美術部で運動も苦手な旭が、持ち前の素直さと頑張りで成長していくのは王道ではありますが感動します。

 

しかし、何と言ってもこの作品は全てのキャラクターにドラマがあり、成長していくのが素晴らしいです。

 

旭と共に入部した八十村 将子(やそむら しょうこ)は剣道で市大会優勝の経験がある実力者ですが、ある理由から剣道を辞めて薙刀に転向しました。そのトラウマに悩み、薙刀部の面々とぶつかりながらも乗り越えていきます。

 

また、同じく旭と同期入部の紺野 さくら(こんの さくら)は何でも上手くこなせる代わりに長く続けられないタイプ。薙刀も、当初は下に見ていた旭が成長して自分を追い越していくのに耐えられずに辞めてしまいます。そこからの成長ぶりが泣けます。

 

先輩では、無敵のエースながら変人の宮路 真春(みやじ まはる)も一見淡々としているようですが、やはり挫折に苦しみますし、野上 えり(のがみ えり)の自分を押し殺してでもチームの勝利を考えるところや受験と部活との両立の悩みもリアリティがあります。大倉 文乃(おおくら ふみの)は体も器も大きくて、作品中で1番完成された人だと思いますが、時に漏らす言葉がぐっと来ます。

 

ライバル校の面々にもスポットライトが当たり、成長していくのも素晴らしいです。

特に國陵高校の部長、寒河江(さがえ じゅん)がバラバラになる部員をまとめようと苦闘していくところや、その原因となる一堂 寧々(いちどう ねね)の変化、寧々と同期で反感を持つ的林 つぐみ(まとばやし つぐみ)との関係。

 

また、部活物にありがちの「絶対王者」はこの作品にも登場します。

しかし、通り一遍のステレオタイプではなく、その内部での衝突や葛藤まで丁寧に描いてあるのがこの作品の凄いところ。

天才・戸井田 奈歩(といだ なほ)を中心として、唯々諾々と奈歩に従う者、奈歩の代わりに闇を背負おうとする者、ついていけずに邪道を進む者…こちらでも一作品できてしまうんじゃないかというぐらい深いです。

 

更に特筆すべきが、顧問などの大人の心情まで描かれていること。

部活物でここまで描いている作品て他にないのでは…?

 

個人的には、小林先生が大好きです。

何もしないでサボってばかりだし、空気を読まない発言ばかりの駄目な大人なんですがたまに物凄く良い仕事をするんですよね。

ピンと張り詰めてばかりの面々に、もっと緩くても大丈夫だよ、世界は広いし人生は長いんだよって言ってくれているような。

本人は半分以上無自覚なんでしょうけど。

 

 

キャラクターは見た目も個性的で可愛いし、複雑な動きも見やすくてスピード感と迫力がある上に感情もひしひしと伝わってきます…って、改めて考えると神作画ですね。

 

ギャグセンスも良く、感動と笑いが交互に来て感情を揺さぶられます。

あらゆる人にオススメできる傑作です!