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あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結)】「第3のギデオン」乃木坂太郎 評価:☆☆☆☆☆

フランス革命を舞台に、数奇な運命をたどる二人の男とそれを取り巻く人々の物語。

主人公は反体制派として活動するギデオン・エーメ。貴族や教会の横暴に怒り、フランスを平民が笑って暮らせる国にするという崇高な理想を持っています。一方では生活のためにエロ小説を書いたりしているギャップが良いです。

 

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引用元:乃木坂太郎「第3のギデオン」1巻第1幕 小学館、2015年

 

さて、そんなギデオンは一人娘のソランジュと各地で演説をしながら暮らしていましたが、あるときそれを疎ましく思う貴族に投獄されてしまいます。

 

ソランジュを人質に取られて反体制活動を止めるように迫られたギデオンは、あっさり止めることを誓いますが、当然のことながらそれは全く信用されません。見せしめとしてソランジュを殺されそうになった瞬間、仮面の男が颯爽と現れてソランジュを助け出します。その名はジョルジュ・ド・ロワール

 

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引用元:乃木坂太郎「第3のギデオン」1巻第1幕 小学館、2015年

 

実はギデオンとジョルジュは幼い頃、兄弟のように育った仲でした。ある事件が原因で離れ離れになっていた二人が、こうして偶然18年振りに再会したことから物語は始まります。

 

話し合いによる改革を目指すギデオンと、暴力による革命を目指すジョルジュ。二人は時には近づき、時には交差しながら、フランス革命という大きな時代のうねりを作り出していきます。

 

そう、この二人、飲み込まれるのではなく作り出す側なんですよね。ジョルジュの策謀とギデオンの信念がぶつかり合う様は見ていて熱くなります。

 

ギデオンは平和的解決という理想を求めるあまり、どっちつかずの曖昧とも言える態度になりがちなのに対して、ジョルジュは冷酷に人の弱みをついて陥れ、扇動し、殺して自分の野望に突き進みます。

 

ジョルジュの知略と冷酷さはまるでサスペンスを見ている様で、背筋が凍ります。一方でその美しさ、賢さにどこまでも惹き込まれていってしまいます…。

 

また、二人と関わっていく人達も魅力的です。

ジョルジュに憧れる美青年サン・ジュスト、冷酷に見えるが実は純粋な心を持つビッグモーター、優れた頭脳と弁論術のロベスピエール、女性の地位向上の為に手段を選ばないマダム・ロラン

 

最初はジョルジュの忠実な部下の様に見えたサン・ジュストが段々ただの可愛い男子になっていったり、ソランジュがジョルジュの元に走り、ビッグモーターを教育していったり、これでもかという位に意外性に溢れたドラマが展開されていきます。この構成が素晴らしい!

 

しかもその間、背景にはずっと不穏な空気が漂い続け、緊張感が途切れないのも凄いです。もうこれは読み続けざるを得ないですよね。

 

更に、中盤からはフランス王妃マリー・アントワネットと国王ルイ16世が登場するのですが、この二人が主役を食うほどの存在感を示します。

 

というか、後半はもうこの二人が主役と言っても過言ではない

 

マリー・アントワネットの可愛さ、賢さ、強さには誰もが惚れてしまうはず!

ルイ16世も優れた王でありながらも悩める一人の男として描かれていて、思わず応援したくなります。

 

ギデオンとジョルジュに隠された秘密、それぞれのキャラクターの持つ複雑な思いが絡み合って織りなす物語。これが高い画力で描かれていて、面白くないはずがない!

 

間違いなく自信を持ってオススメできる名作です!!