【漫画レビュー(完結)】「おかしき世界の境界線」村田揶融(やゆう) 評価:☆☆☆☆☆
人ならざるものが見える千鶴。他人との距離がうまく取れない美涼。
住む世界が違う二人の境界線の物語。
引用元:村田揶融「おかしき世界の境界線」第1巻第1話 小学館、2020年
周 千鶴(あまね ちづる)と水卜 美涼(みうら みすず)は高校の同級生。
千鶴は生まれつき幽霊やあやかしなど、「向こうの世界」の存在を見たり、話したり、触ったりすることができる不思議な能力を持っています。しかし、そのせいで周りからは「おかしい」「呪われる」などと噂されており、孤立しています。
美涼は母親を亡くしていますが父親が裕福で、高級車で送り迎えされるようなお嬢様。最初は普通の友達でも、金銭感覚のずれなどから徐々にお金をせびられるようになったりして上手く人と付き合うことができません。
あるとき、千鶴が友達に裏切られた美涼を助けたことから二人は友達になります。それぞれに孤独を感じていた二人は少しずつ互いを分かり合い、絆を深めていきます。
ですが、千鶴には「悪い感情を抱いてしまうとその相手が呪われる」能力もあり、他人と距離を縮めるのは相手を危険に晒すことに繋がるのでした。
また、美涼の父親も「向こうの世界」を見られるアプリを作り、亡くなった妻(美涼の母親)に話しかけるなど不穏な言動をしており…。
世界観もユニークで良いですし、ストーリーも起伏に富んでいて面白いです。
そしてまた、それらを描き出す絵の力が素晴らしい。ぱっと見て「上手い!」というわけではなく独特の味があるんですが、作品の世界の空気を感じることができます。また、キーになるコマの表現が限りなく美しく、物語と相まって感情を揺さぶられます。
引用元:村田揶融「おかしき世界の境界線」第1巻第1話 小学館、2020年
この二人の表情と仕草、空と光の美しさに、一話目にして心を奪われました…。
名作ですので、ぜひ一度読んでみることをオススメします。