【漫画レビュー(完結)】「火葬場のない町に鐘が鳴る時」漫画:和夏弘雨(わなつこう)、原案:碧海景(あおみけい) 評価:☆☆
ゾンビらしきもの出てくるホラーアクションなんですが…14巻に渡って作者の頭の中だけで成り立っているらしい物語を続けられるため、何もかもが意味不明な怪作。
幼い時に過ごした山奥の町「みとず町」に10年ぶりに戻って来た卯月 勇人(うづき ゆうと)。幼馴染の豊橋 咲(とよはし さき)との再会を喜びますが、町は午後6時を過ぎると冥奴(めいど) 様と呼ばれる化け物が徘徊する魔境と化していました。
と、ここまで読むとホラーとして面白くなりそうな設定です。
登場人物同士の会話が噛み合っていなかったり、変なノリについていけなかったりはしますが。
さて、勇人はやがてもうひとりの幼馴染、山神 龍児(やまがみ りゅうじ)とも再会し、行方が分からなくなった父親を探しに危険な町の中へと出て行くのでした…。
まあ、各キャラクターの意味不明な行動はあるし冥奴様は怖くないという欠点はあるものの、まだここまではついて行けました。
しかし、この辺りから作者の怒涛の独りよがりが加速していきます。
物語が進むにつれて登場人物がやたらと増えていくんですが、敵の一味がいきなり「命を懸けてお前を守る」と言い出したりします。…意味不明ですよね?
そこに至る過程がほとんど描かれないため、読者は完全に置いてけぼりです。
更に死んだはずのキャラクターが脈絡もなく生き返って主人公勢を守ったりします。しかし、そもそも思い入れのないキャラクターが生き返っても全く熱くなれず、冷めた眼でご都合主義を見るばかりです。
謎のアイテムも大量に出てきますが、「使い方は不明」「どこにあるかも不明」「効果も不明」とかそんなのばかり。それが突然効果を発動したりします。キャラクターは驚いたり感動したりしていますが、読んでいる方はぽかんとしているしかありません。
敵のラスボスも「住民を救うんだ」と言ったり「皆殺しだ」と言ったり支離滅裂。部下を冷たく切り捨てる冷酷さを出そうとしたり、常に冷静な黒幕として振る舞おうとする割にはピンチになるとパニックになったりとキャラクターも定まりません。
主人公だったはずの勇人は途中から全く出て来ませんし、本当に意味の分からない怪作でした。最後まで読めば多少設定の説明がされてスッキリできるかも、というわずかな希望にすがって苦痛に耐えながら読み終えたのですが、やはりそんなことは全くありませんでしたね。
ホラーにしろゾンビものにしろ、他にいくらでも良い作品があるので、そちらを読むことをオススメします。下手に長い分、苦行で時間を無駄にしてしまった気分です…。