【漫画レビュー(完結)】「ルーザーズ」山本隆一郎 評価:☆
ヤクザの世界に改革を起こす、兄弟の物語…のはずだった?
物語はあるボクサーの視点から始まります。
世界チャンピオンを挫折して引退し、くすぶっていた哲太は轟魔理雄と塁時の兄弟に出会います。不良たちには名の知れた存在の2人ですが、実は関西最大の暴力団の会長の隠し子でした。
その会長が亡くなり、魔理雄と塁時は跡目争いに名乗りを上げます。全く関係の無かったはずの哲太ですが、何故か否応なしに彼らの闘いに巻き込まれていくことに…!
この導入が魅力的。魔理雄と塁時の間にも張り詰めた緊張感が漂っていて一枚岩ではなさそうですし、ここから展開されるドラマに期待は高まります。絵も上手くて読みやすく、ぐいぐい引き込まれていきます。
次の会長の座を、ぽっと出の魔理雄と塁時兄弟に奪われるのは納得のいかない暴力団幹部の面々。とはいえその中には温度差もあり、そこをついた陰謀や抱き込み工作が飛び交います。しかし、ここで魔理雄がその才覚を見せつけて圧倒。最有力候補だった宇治田を見事に潰します。
この辺りの裏のかき合いや頭脳戦も緊張感と意外性があり、面白いです!魔理雄が何食わぬ顔で宇治田の家に家庭教師として雇われていたところでは思わず声を出して爆笑してしまいました。
さて、これで跡目争いに決着が着いたかと思いきや、まだ諦めてはいませんでした。密かに魔理雄と塁時を亡き者にすべく、殺し屋を差し向けます。雇われたのは香港黒社会の凄腕。
暴力団の内部抗争に香港黒社会の殺し屋となると、もうどんな手段もアリですよね。どんな手で来るんでしょうか。きっとこれは想像を超えた神経戦、頭脳戦からの凄まじいアクションになるに違いない!!期待は高まる一方です。
…って、え?
普通に車で事務所に来て殴り合いしてる…!!?
殺し屋とは…香港黒社会とは一体…。
更に、その中で唐突に始まる殺し屋の過去編。
意味が分からなかった方、大丈夫です。私も同じです。
見間違いではありませんので、念の為にもう一度。
殺し屋の過去編。
は????いや、それ必要?
魔理雄の側近連中とか宇治田や他の閻魔会幹部とか、掘り下げるキャラは他になんぼでもおるやん!?
なぜそこに行った!?
最後には、魔理雄が「暴力団を改革する」と言い出し、事件を撮りに来たTVを使って所信表明。
「悪いことをやってる連中にもそれぞれのドラマがある」
「そういう風にしか生きれない人間もいる」
それを聞いた一般人の感想
「反社のイメージが少し変わりました」
んなわけあるかいーー!!!
ツッコミしかないわ、こんなもん!!
ドラマがあるからって犯罪を肯定されたら、被害者はたまったもんじゃないわ!!
想像するべきは、一方的に被害にあった方の悲惨なドラマやろうがい!!
で、そこで最終回来るんかーーい!!
読み終わった私の感想
「なんでこうなった…」
魔理雄が格好良い風に描いてあるので、感化されて「そういう風にしか生きれない人間もいるんだぜ!」とか思う犯罪者が出ないことを願うばかりです。