yofuu’s memo

あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結)】「うっちゃれ五所瓦」なかいま強 評価:☆☆☆☆

一応、高校の相撲漫画…なんですが。

かなりぶっとんでいて面白いです。

作者は「わたるがぴゅん!」などを描いている、なかいま強。この作者の漫画は基本的にはコメディタッチなんですが、ギャグが切れまくりの一方でシリアスな見せ場もきっちり押さえてくれます。読んでいて楽しくなれるので、大好きです。

 

さて、本作の主人公は武蔵山高校相撲部3年の五所瓦 角(ごしょがわら かく)。生真面目で真っ直ぐな性格で、相撲をこよなく愛しています。しかし、自分と同じ様に相撲を愛する人は必ずいるはずだと信じて部員勧誘を全くしなかった結果、相撲部は自分1人だけになってしまっています。

 

当然来年には廃部になってしまうのですが、かつて強豪だった相撲部の最後を団体戦優勝で飾ろうと決意したところから物語は始まります。

 

この手の話の例によってまずはメンバー集めからなのですが、この作者にかかるとキャラクターがとにかく濃くなります

 

柔道部の主将、インターハイ全国優勝の清川 薫(きよかわ かおる)。五所瓦と清川に「硬派」を感じた応援部1年生の難野 一平(なんの いっぺい)。レスリング部の跳ねっ返り1年生、関内 孝之(かんない たかゆき)。恵まれた体格の囲碁部の2年生、雷電 五郎(らいでん ごろう)。

 

メンバーを集めるところからしてすでに面白い。五所瓦に「男」を感じて柔道と決別する清川、「硬派」に憧れて勝手に押し掛けてくる難野、プロレスラーになるために強くなろうとする関内、無理矢理巻き込まれた雷電

 

左から関内、雷電、五所瓦、清川、難野。下はライバルとなる、前年度日本一の田門とその監督。

f:id:yofuu:20200228215501j:image

引用元:なかいま強「うっちゃれ五所瓦」第1巻第8話 小学館、1988年

 

性格も入部理由も四者四様ですが、話の持って行き方、ギャグセンス、キャラクターと全てがかみ合っていてどんどん続きが読みたくなります。

 

そうして集まった5人が、五所瓦の元で稽古を重ね、地区大会に出場します。なお、この作品の大部分はこの地区大会を描いたものとなっています。

 

ここで5人はそれぞれの特徴を活かして快進撃を見せるのですが、なんと言ったらいいのか…一言で言うと、ほとんどまともな相撲は取りません

 

清川は柔道の投げ技を武器に安定した強さを見せます。しかし、その強さ以上にその侠気が良い。ほれぼれします。

 

難野はほぼギャグ要員。姑息な手を駆使して勝とうとしますが…結果はお察しです。たまに役に立っていたりすることもありますが。ただ、貧弱な体で大きな相手にも逃げずに知恵を絞って何とか勝とうとする姿勢には一目置かれています。

 

関内はレスリング部の部長も対戦を避けるほどのセンスと身体能力を武器にして、派手にプロレス技を決めます。相撲の決まり手でブルドッキングヘッドロックとか初めて見たわ。

 

雷電は元々囲碁な上に無理矢理巻き込まれたにも関わらず、素直に五所瓦のために一所懸命頑張っているところが健気です。意外とその体を活かして活躍します。もしかすると、潜在能力は五所瓦に匹敵するのでは…?

 

そして、五所瓦は強烈なぶちかましと怪力で真正面から真っ直ぐに勝利を掴みます。実は五所瓦は実力でいうと全国でもトップクラス。全国1位の選手が同じ地区にいて、しかもその選手と毎回1回戦で当たっていたため、地区予選落ちしているという運の悪さが災いしています。

 

それぞれ個性的で見せ場があって良いですが、個人的にはその中でも難野の試合が一番好きですね。毎回何が飛び出すか分かりません。しかも大体予想のはるか斜め上を行くので大爆笑してしまいます。

 

対戦相手も個性的な面々がそろっているので、毎回笑いながら読んでいけます。

格闘技なので怪我や流血などの少し痛々しい場面もありますし、ええ…となる展開もありますが。一言言いたいのは、審判仕事しろ

 

果たして五所瓦は全国1位のライバル、田門を倒して悲願を達成できるのか!?

 下手に長引かせず、スッキリとした終わり方も気持ち良いです。

 

おすすめなのは、熱血や青春が好きな人よりもコメディが好きな人。決してまともな相撲を期待して読んではいけませんが、名作です!