【漫画レビュー(完結)】「未来日記」えすのサカエ 評価:☆☆☆☆☆
もしも未来が書かれた日記を手に入れたら…。その能力でバラ色の日々を送る少年。
しかし、それは同時に殺し合いのゲームの始まりだった。
誰とも関わらず、黙々と携帯電話で日記を付けて日々を過ごす中学2年生の天野雪輝は、自分の空想の中の神・デウスから未来の出来事が書かれた日記を渡されます。
それを利用してテストで満点を取ったり危険を回避したりと調子の良い日々を送る雪輝ですが、あるとき自分が通り魔に殺される未来が書かれているのを見てしまいます。
そこに現れたのが同級生で優等生の我妻由乃。彼女は雪輝の日記に書かれた未来を変えて雪輝を追い詰めます。そう、彼女も未来日記の所有者だったのです。しかし、彼女は突然雪輝にキスをします。
実は由乃は雪輝のストーカーでした。彼女の日記は10分刻みで雪輝の行動が書いてある「雪輝日記」。
そしてまた、雪輝の予知した通り魔も未来日記の所有者でした。由乃の協力で通り魔を倒した雪輝は、デウスに「これはサバイバルゲームだ」と告げられます。「生き残った一人に私の『後継』をやる」=神になる、と。
そして1stから12thまでのナンバーを振られた12人(通り魔=3rdは既に脱落していますが)による殺し合いの生き残りゲームが開始されたのでした…。
一応デスゲームものではありますが、通り一遍の話とは一線を画します。
そもそも、作品の重点が殺し合いではなく、散りばめられた謎解きや由乃のヤンデレっぷり、登場人物のドラマといったところに置かれています。
しかし、能力バトルとして見てもユニークです。
まず、未来を予知する能力を全員が持っており、その内容が各自微妙に異なるというのが面白い!
例えば雪輝の日記は「無差別日記」。雪輝の見聞きしたものを全て無差別に書いています。但し、自分自身のことは書いていません。また、由乃の「雪輝日記」は逆に雪輝のことしか書いていない、などです。
そして個性あふれる登場人物たち。
雪輝の優柔不断さ、行動力のなさは見ていて脱力するほどです。何かあるとすぐ泣いて諦めますし…。そこに笑顔で人を惨殺して「ユッキー♡」と迫ってくる由乃の可愛さと底冷えする怖さが合わさって、何とも言えない感情がざわつきます。
他にも9th=雨龍みねねは雪輝、由乃に続く3番めの主人公と言っていいほどの活躍を見せてくれますし、正義のヒーローを標榜する12thは出番こそ短いですが強烈なインパクトを与えていきます。愛に生きる7thも、雪輝よりよほど主人公に向いているのではと思わされます。
更に、この作品の核と言っていいのが散りばめられた謎と伏線です。それをきっちり回収してくれます。
テンポも良いですし、雪輝と由乃が精神的に成長していくのも素晴らしいです。
細かく見れば色々とツッコミどころもあるとは思いますが、それを勢いと強烈なキャラクターと練られたストーリーで十分以上に補った、ユニークすぎる名作です!