【漫画レビュー(完結)】「僕たちがやりました」原作:金城宗幸、漫画:荒木光 評価:☆☆☆
不良とのイザコザから大量殺人犯になってしまった、普通の高校生たちの物語。
現実味は薄いですが、何とも言い難い後味が残ります…。
「そこそこ」の幸せを望むトビオは、伊佐美、マル、パイセンの3人の友達と毎日ダラダラと遊ぶ日々を過ごしていました。
しかし、あるとき、マルが不良に目を付けられて酷い目に合わされます。その復讐として、4人は相手の学校に爆弾を仕掛けて窓ガラスを割り、ビビらせてやることにしました。
最初は上手くいったように見えた作戦でしたが、仕掛けた爆弾のうち一個がプロパンガスに引火してしまいます。その結果、窓ガラスを割るだけだったはずのイタズラは大事故に発展して10人もの生徒が亡くなってしまうのでした。
自分たちのしでかしたことの大きさに怯えつつ、かと言って警察にも捕まりたくないトビオたちのとった行動は…!?
何とも言い難い気持ち悪さがある作品です。こういうストーリーなので、普通は罪とキャラクターの性格のギャップや取り巻く人たちとの関係の変化などに複雑な感情が生まれるんですが、この作品はそうではないんですよね。
それは、キャラクター全員に何かしらの異常性があるせいではないかと思います。
トビオは「そこそこ」の幸せを望みながらも人生に退屈して諦観を持っていますし、伊佐美は女癖が悪く、マルはいざとなれば平気で友達を裏切ります。パイセンは働きもしないのに大金を持っており、何でも金で解決しようとします。
そして彼らには計画性や深い考えが全く無く、その場のノリと思いつきで行動します。その薄っぺらさが更に気持ち悪さを増大させています。
私は最初、この作品のテーマは「犯した罪にどう向き合い、つぐなうのか」だと思っていたのですが、それは恐らく間違っていたのでしょう。本当のテーマは、この薄っぺらさとその怖さを描くことだったのではないでしょうか。
そう考えると、実に見事にテーマを描ききっていると思います。
現実味が薄いのは、リアルにすると怖すぎるせいかも知れません…。
尚、ドラマ化もされています。結末などが原作と大幅に違いますので、気に入った方はそちらも観てみてはいかがでしょうか。