【漫画レビュー(完結)】「ハーメルンのバイオリン弾き」渡辺道明 評価:☆☆☆
人に災いをもたらす魔族を倒すために旅をする勇者とその仲間たちの物語。
王道のファンタジーかと思いきや、行き過ぎなほどダークでシリアスなストーリーとキレキレのギャグが共存するという、稀有なセンスの作品です。
人を虐げ、害を為す魔族が跋扈する世界。その中を旅する美形の青年がいました。彼こそが武器を持たずに魔族を倒す辺境最強の魔曲使い、勇者ハーメル。
北へ向かって旅をする彼の目的とは?過去を語らない彼が持つ秘密とは?
目的を同じくする者たちを仲間に加えながら、徐々に謎が明らかになっていきます。
しかし、行く先にはいくつもの過酷な試練が彼らを待ち受けているのでした…。
引用元:渡辺道明「ハーメルンのバイオリン弾き」第1巻第1話 スクウェア・エニックス、1991年
ギャグのセンスが良すぎです。
特に前半はキレッキレのギャグを折り込みながら本筋のシリアスなストーリーも進んでいくというバランス、シリアスとギャグの切り替えのスムーズさが天才的です。
バイオリンにジェット噴射させるとかのギャグネタがシリアスな進行に絡んでいるところも笑えます。
ファンタジー世界に現実の音楽や音楽家のうんちくが入るなど世界観は無茶苦茶ですが、作品内でもツッコミが入っていますし、本筋ではないので問題ないかと思います。
また、各国や軍隊の制度、魔族の組織や目的などにも疑問なところはありますが、これも本筋を盛り上げるための背景のようなものと割り切ってしまえば、あまり気にはなりませんでした。
キャラクターの衣装や武器などのデザインセンスは独特で格好良いです!
後半はややシリアスで暗い話が多く、ギャグも少なくなっていってしまったので、前半の素晴らしさが減ってしまったのが残念でした。
バイオリンと魔曲の出番もなくなっていきますし…。
ストーリー的には、パンドラの箱を最初に使用した勇者の謎やサイザーが天使の羽を持つ理由などの伏線もしっかり回収し、最後まで綺麗にまとまっていると思います。
(この辺りの真実が明かされたときは驚愕しました…。確かに筋は通っているんですが、納得はしたくない…!)
前半は間違いなく名作なので、オススメなんですが…前半の勢いで後半も行って欲しかったところが少し残念。