【漫画レビュー(完結)】「シュトヘル」伊藤悠 評価:☆☆☆☆☆
滅んだ国の、滅ぼされようとする文字を巡る物語。紛う方なき神作!
物語は現代日本から始まります。
少し変わり者の男子高校生須藤は、毎晩のように大昔の戦争の夢を見ていました。そのせいで学校にも行く気になれず、鬱々と毎日を過ごしています。
そんなあるとき、転校生のスズキさんという女子と出会います。須藤が作っていた馬頭琴にスズキさんが触れたとき、夢で見ていた光景が現実として現れます。
そこはチンギス・カンの時代のモンゴル。
そこでは須藤は悪霊(シュトヘル)と呼ばれる女兵士であり、スズキさんにそっくりの少年ユルールと共に旅をすることになります。
それは、滅ぼされようとする文字を護るための逃避行でした。追って来るのはユルールの兄であり、シュトヘルの仇である虎の男・ハラバル。追わせるのは大ハンことチンギス・カン。
文字の力を信じるユルール、文字に救われたシュトヘル、文字に呪われたテムジン(チンギス・カン)、一族のために生きるハラバル。
そして、心優しい現代高校生の須藤。
それぞれの信念と想いが複雑に絡み合い、様々な人々を巻き込んで物語を紡いでゆきます。
この作品は、とにかくキャラクターが魅力的です。
上の4人以外にも多くのキャラクターが出てくるのですが、全員が自分の信念に従って生きているところに惹かれます。それでいて、時には死闘を演じながらもお互いに少しずつ影響を与え合ったりと微妙な関係性が面白いです!
迫力のある絵が、更に魅力を増してくれます。
戦闘シーンのコマ割りや構図も上手いですし、決めゴマからはキャラクターの魂が滲み出ているような凄まじさがあります。
テーマも深くて考えさせられます。
こうして何気なく使っている文字がどれ程素晴らしいものかということを、改めて感じました。
テーマ、ストーリー、キャラクター、絵やセリフのセンスに至るまで、全てが最高の作品ですので一読をオススメします!