【漫画レビュー(完結)】「アートギャングスタ」齊藤真聖(まさと) 評価:☆☆
不良チームに「デザイナー」として入ることになった高校生が、自分自身と世界を少しずつ変えていく物語。
切り口が斬新で面白かったんですが…。
主人公の藤宮京介は「絵で世界を変えたい」という思いを抱く高校3年生。休み時間も独りで黙々と絵を描いており、クラスメートからはキモくてヤバいヤツ扱いされています。放課後も1人しかいない美術部で絵を描いています。
そんな彼のところに学校一の不良でクラスメートの逢沢涼が現れ、「おまえの力を貸して欲しい」と頼みます。ギャングの描いた街の落書きをストリートアートに変えて欲しい、と。
アートがテーマなのに絵が下手すぎるのは気になるものの、これは斬新で面白い!これまでの不良漫画にはなかった切り口ですね。
逢沢も不良っぽいのは髪型とタバコを吸うところぐらいで良いヤツみたいですし、これは名作になるかも…。
京介が逢沢と彼のチーム「ラビットフット」のメンバーに少し強引に連れて行かれたのはとある児童公園。逢沢は公園の壁に下品な落書きがされているのを京介に見せて言います。
「ココは昔からうるせぇくらいガキの声が止(や)まない公園だった…」
「最近じゃガキ一人見ねぇけどな」
「コレ見て何も感じ無(ね)ぇなら無理にとは言わねぇ」
「帰っていいぞ」
これに対する京介の答え。
キャラクターの表情や仕草には色々引っ掛かるところもありますが、この熱さはキライじゃないぜ!
こうして京介は不良たちの世界に足を踏み入れます。
漫画の絵がイマイチなので「スゲエ」と評される京介の絵が表現できるのか心配でしたが、完成した壁画は意外と良い感じだったのでちょっと安心しました。
さて、ラビットフットの一員として迎え入れられた京介ですが、絵を描いているだけで喧嘩などでは役に立たないので、本当に仲間と言えるのだろうかと葛藤します。
しかし、やがて他のチームとの抗争の中で自分も体を張るうちに、自分も仲間なんだと自覚できるようになっていきます。
このストーリーの流れは非常に良いんですが…一つ一つのエピソードの見せ方がとにかく下手。喧嘩シーンの迫力の無さや不自然で頭の悪い行動などが目立ちます。
例えば敵チームに襲撃をかける場面。相手チームの幹部とボスは、舐めきった会話をしながらずっと座っています。雑魚が全員やられた後で「フッ」「ガキがイキがりやがって」とか言いながら出て来てあっさりやられます。
しかも、1人目は圧倒して片膝ついている相手を前に「イェイ」とか言っている間にドロップキック一発で気絶。2人目は「お前…めんどくせぇわ」とクールぶりながら割ったビンで刺そうとしますが、逆に奪われ腕を刺されて3コマに渡る悲鳴を上げたところをキック一発で気絶。最後に出て来たボスも、顔にキック一発もらったら足がカクカクになって「あ゛っ…」「お゛っ…」て良いながら尻もちついて、そのまま「ん゛っ…」「あ゛っあ」って言いながら無抵抗で殴られて気絶ですからね。
全く盛り上がるところがない…。
後は、ところどころについていけないセンスがありました。
ラビットフットのメンバーのバイクを京介がペイントした場面。最後のコマが、そのペイントされたバイクなんですが、これ「めちゃめちゃカッケェ!!!」??田舎ヤンキー丸出しでダサくないですか…?
まあ、この辺は主観や好みの差かも知れませんが。
ついでに言うと、その前のコマもちょっと引っ掛かるんですよね…。ラビットフットがモブの人たちに「スゲッ…」「おっかねぇ」「カッケェ」って言われてるんですが、「そのメンバーになった主人公スゴい」と、「ヤンキー格好良い」というのが全面に出てしまっていて、ちょっと引きます。
残念ながら、作品としてはあまりおすすめできません。
最初のエピソードは上手くまとまっていたので期待したのですが、残念でした。
と言うか、それが全てだった気も…。