【漫画レビュー(完結)】「Dreams」原作:七三太朗、漫画:川三番地 評価:☆☆
短気ですぐに手が出るが、才能は突出している問題児が甲子園を目指す野球漫画。
基本設定は良かったのですが…。
中学3年生の久里 武志(くり たけし)は突出した野球の才能を持ちますが、何か言われるとすぐに手が出る問題児のため、どこの高校からも受け入れてもらえません。
最後に受けに来た夢の島高校でも、面接で監督に暴力を振るってしまいます。
しかし、その可能性に賭けた監督、工藤に拾われることになります。
やはり人間的にどこか問題があるものの、人情味のある工藤と夢を語り合う久里。
果たして久里は、夢を実現させることができるのか?
精神面は人より未熟ですが、技術と体力は超高校級というアンバランスな久里のキャラクターが良いです。
監督の工藤や夢の島高校のメンバーも良い味を出していて、序盤は名作と言って良いと思います。
絵や効果音、コマ割りは上手いとは言えませんしクセがあるので少し読みづらいですが、内容がそれを上回って面白いです。
が、話が進むにつれて徐々に迷走していきます…。
「魔球」が出てくるまでは良いのですが、次の試合相手には全く投げず、組み立てにも使わないことにまず違和感を覚えます。
とにかく打たれるまで同じ球を投げ続け、打たれたら次の魔球…という、適当過ぎる試合展開が続くのでウンザリしてきます。
しかもテンポが悪く、一試合がダラダラと長いです。
魔球の理論を説明するのに数ページ、それに驚いたりする人たちのセリフが数ページ、投げながら長々とセリフを喋るので数ページ、投げた後にも説明や周りの反応、バッターのセリフや独白で数ページ…という具合で、酷い場合は1球投げるのに2話ぐらいかかります。
そしてまたクドいぐらいに何度も同じ理論の説明が入ります…。
魔球の増加とともに背景に力が入るようになりますが、ソコジャナイ。
背景にカツオが飛んだり隕石が降ったりとか要りませんし、むしろ邪魔です。
更に、話も同じパターンの焼き直しばかりになります。試合前にわざわざ相手のところに乗り込んでいって手の内を見せ、それを攻略して…の繰り返しです。
キャラクターや物語も破綻して、ツッコミどころもどんどん増えていきます。
理論を教えるだけで全員その通りできるようになるとか。
例えば、どんなに下手なバッターでも、ボールの中心の7mm下を打てばホームランになる!→本当だ!
…中心の7mm下を狙って打てるって時点でおかしくないですか…?
ベンチでの会話が一瞬で球場中に広まるとか、一度見た球は打たれるとか。
お前らは聖闘士か!!
一番がっかりしたのは、「久里は短気で乱暴者だけれども、野球には真剣」という、この作品の根本が貫かれていないことです。
そこを崩したら作品として全く意味を成しません。
タバコを吸う、酒を飲んで試合に出られない…。
そんな人間のどこが野球に真剣なんでしょうか。
最後も最悪と言っていい終わり方。
さんざん気を持たせて登場した準決勝の対戦相手。その久里対策が、球を打たない、敬遠して勝負しないというもの。「野球をさせてもらえず、酷い」ということらしいですが、その理論を聞いても頭の上に「?」しか浮かびません。
そのまま相手にせずに勝てばいいのに、キレた久里が結局暴力を振るって退場…。
久里の精神的な成長も無しって、この作者は今まで何を描いていたんだ?
ダラダラと長いだけで、全く価値の無い作品でした。