言わずと知れた超有名作品。
細部は鳥肌が立つほど素晴らしいのですが…。
人を喰らう「巨人」の脅威にさらされた世界。
人類は身を守るために長大な3重の壁を築き、その中で慎ましく暮らしています。
壁の外にある未知の世界に憧れる少年、エレンは、このまま無難に生きていければ良いと言う大人達に反発し、大きくなったら壁の外を調査する「調査兵団」に入りたいと夢見ています。
しかし、ある日突然、壁を破壊する力を持つ超大型の巨人が現れ、破壊された壁から巨人が中へとなだれ込みました。
人々が巨人に襲われて逃げ惑う中、エレンは目の前で母親が喰われるのを見てしまいます。
巨人への激しい憎悪を抱いた彼は、やがて成長し、希望していた通り調査兵団に入ります。しかし、その目的は「巨人を一匹残らず駆逐すること」に変貌していました。
巨人に襲われた街の奪還、壁の外の調査、と人類は少しずつ巨人に反撃し始めます。その中で、巨人の謎とエレンの数奇な運命も明らかになっていくのでした…。
伏線の張り方や一つ一つのエピソードの完成度が非常に高く、構成が秀逸です。
また、世界観もしっかり練られていて、物語に入り込んでしまいます。その中でも、やはり特筆すべきは立体機動装置ですね!これは本当に格好良いし、機構もきちんと考えられていて素晴らしいです。漫画史に残る発明と言って過言ではないでしょう。
絵は上手いわけではありませんしクセが強いですが、キャラクター、特に巨人の描き分けがしっかりできており、悪くはないと思います。
ただ、残念ながら作品全体としてはイマイチでした。
巨人やエレンにまつわる謎を上手く物語に取り入れ、それぞれのキャラクターも人間ドラマを絡めながら魅力的に描き、伏線も非常に巧妙に張り巡らせていたのに、核となる物語が安っぽすぎました…。
(以下はネタバレを含む為、白文字にしています。反転してお読み下さい)
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結局のところ、この物語はフリッツ王に恋愛感情を抱いたユミルの気持ち一つで世界が滅ぶかどうかが決まるという、いわゆる「セカイ系」の物語に収束してしまいます。
これが判明した瞬間、それまで描いてきた人々の苦闘は全てこんなくだらないことのせいだったのか、と唖然としてしまいました。
そりゃあ本人にとっては大きい問題でしょうけど、世界の存亡に関わらせちゃあダメでしょう…。だって世界にはそうやって恋愛をしている人達が何億といるんですよ?そのうちの1組がこじれたら世界が滅ぶとか、ねえ。
で、最後には「愛する人間が誤ったときに殺してでも止めるかどうか」?本当に、それはミカサが実践するまで分からなかったんでしょうか。
世界の人口、数億~数十億人が2千年間暮らしていたら、そんな愛憎劇がどれだけ起きていることか。
陳腐にも程がある、というのが正直なところです。
これがサイドストーリー的なものならまだしも、メインに据えられてしまってはどうしようもないですね…。
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ストーリーの核となる部分さえ良ければ神作となった作品だと思いますので、実に残念です…。
あ、それと擬音で遊んでいるところが多々あるのですが、シリアスな場面でもお構いなしなので空気を壊してしまっています。特に面白いわけでもありませんし、蛇足だと思いました。
まあ、メインに比べると些細な欠点ですが。