yofuu’s memo

あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結)】「超人ウタダ」山本康人 評価:☆☆☆

異色の刑事ドラマ…というよりは人間ドラマと言うべき物語。

上司の命令を忠実にこなす「優秀」な刑事、歌田マモル。しかしこの「優秀」とは、事件を事故、殺人を自殺として扱うなど、犯罪発生率や検挙率を操作することを指していました。 

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引用元:山本康人「超人ウタダ」1巻第1話 ゴマブックス株式会社、2018年

 

私は警察の実態を良く知りませんが、フィクションとしても理屈は通っているので説得力はあると思いました。本当にこんなだったら怖くてたまらないんですが…。

 

さて、居場所を失うことを恐れて上司の命令に忠実に毎日を過ごす歌田の前に、「自分はお前の前世だ」と言う殺人鬼・神崎の幻が現れ「お前の寿命はあと5年だ」と告げます。そして、「自分たちは超人だから何をしても良いんだ、欲望のままに生きろ」と。

 

最初は聞く耳を持たなかった歌田ですが、片想いだった女性がストーカーに乱暴されて殺されてしまったことをきっかけに、少しずつ変化が起きていきます。

事前にストーカーの相談を受けていたにも関わらず、課長の指示で聞くフリだけして追い返したこと。明らかに殺人なのに自殺で処理しようとしたこと。

心に引っ掛かりを覚えた歌田は密かに捜査を始め、神崎の力も借りて犯人を捕まえます。

 

その後も歌田は神崎の犯罪心理分析の力を借りて事件を解決していくようになります。しかしその一方で、上司や同僚は性格が一変した歌田を疎ましく思うようになっていきます。

 

いつの間にか、歌田は当初の姿はどこに行ったのかと思うほどの熱血刑事に。加害者すら命がけで助けます。 

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引用元:山本康人「超人ウタダ」4巻第38話 ゴマブックス株式会社、2018年

葛藤を抱きながらも徐々に変わっていく歌田が丁寧に描かれており、本当に面白い

 

神崎はあくまで欲望のままに殺人を犯すことを勧めてきます。その緊張感のある関係も良いですし、上司や同僚との対立を乗り越えていく歌田が格好良くなっていきます。

 

しかし、途中に神崎の過去編が入った辺りから、少し方向性が狂って迷走します

もったいない…。

 

とは言え、歌田の情熱が同僚たちをも変えていき、最後は課長も正義感を取り戻して男っぷりを魅せてくれます。この熱さ、嫌いじゃないぜ…って嘘です、大好きです!

 

そしてラストもなかなか綺麗に締めてくれます。

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引用元:山本康人「超人ウタダ」6巻第64話 ゴマブックス株式会社、2018年

 自分を認められる様になった歌田の笑顔が最高に素敵

 

途中の迷走を除けば☆☆☆☆の作品です!