【漫画レビュー(完結)】「今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね」原作:要マジュロ、漫画:榊原奈々 評価:☆☆
愛情が殺意に変わる病に侵された高校生の物語。
一言で言うと「ぼくがかんがえたすごいひげき」。
掃除好きの男子高校生、神城 卓(かみしろ たく)は、ある晩見知らぬ男が女性に暴力を振るっているのを止めに入ります。しかし、その男は「感情が移るから逃げろ」と奇妙な言葉を吐きます。
翌日、神城はお笹馴染みの同級生・花園 魅香(はなぞの みか)への恋心が殺意に変わっているのに気付きます。
それは、その後に続く悲劇の始まりでした…。
引用元:作者「タイトル」x巻第x話 出版社、出版年
センスの欠片も感じられないタイトルから、嫌な予感はしていました。
読んでみると、やはり中身も微妙でした…。
何よりも、根本となる設定が曖昧なのでどうしようもありません。
愛情の強さによって殺意の強さも変わるというところまでは設定として理解できます。
しかし、その後花園が学園中の生徒から狙われることになるあたりで疑問符が付き始めます。花園は学園中の生徒から人気があるから、ということなのですが「憧れの存在」程度だとごく薄い殺意にしかならないのでは…?
しかも、「一度この病気になると治らない」とか「ずっと殺意に侵されたままになる」という設定が足され、恋愛感情と本当に関係あるのかどうかも怪しくなっていきます。
移る設定もいつの間にか置き去りになっていますし。「国が隠そうとしてる」とか、この感染力だと無理がありますよ。あっという間に国民全員が感染してもおかしくないレベルです。
更に「この病気になると身体能力が上がって怪我や病気も治りやすくなり、超能力のような力も使える」とか、もう何でもアリですね。
そんなこんなでバトル漫画と化していくんですが、感染していない人も感染者と普通に戦えていたりして、強さの定義もよく分かりません。
最後の方には感染しないはずの人も感染者の身体の一部を移植したら感染者と同じ能力が使える、という設定も足されてカオス極まれりという感じになります。
きちんと世界観ができていないままに「恋愛感情が殺意に変わって、好きな人と殺し合う」という衝撃的な内容であれば読者を釣れるだろうと考えた結果、稚拙な作品になってしまったのでしょう。
無駄に殺人シーンが多いところからも、とりあえず衝撃的な内容にしておけばいいだろうという思惑が透けて見えますね。
とにかくそれだけしかないのでキャラクターもストーリーも薄いです。結局タイトルにも全く意味はありませんでしたし。
いわゆる商業主義に走った駄作ですね…。
絵は綺麗なのに残念です。