yofuu’s memo

あらゆるものを一口レビュー

【漫画レビュー(完結、挫折)】「エリアの騎士」原作:伊賀大晃(いがのひろあき)、漫画:月山可也(つきやまかや) 評価:☆☆

天才サッカー選手である兄の心臓を受け継いだ弟が、諦めていたサッカーの夢を仲間と共に目指していくサッカー漫画。…なんですが。

ただのコマと化したキャラクター、ストーリー優先でリアリティ皆無かつワンパターンな試合展開で、読むのがキツかったです…。

中学生にしながら天才サッカー選手との呼び声高い兄・傑(すぐる)と、平凡な弟・駆(かける)。駆は、自分にはサッカー選手としての才能はないと諦め、マネージャーになっています。傑はMF(ミッドフィールダー)として、駆のFW(フォワード)としての才能に気付いており、何とかして選手として復帰させたいと考えています。

 

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引用元:伊賀大晃月山可也エリアの騎士」1巻 #1 講談社、2007年

 

舞台設定は悪くないんですが、残念ながらキャラクターに魅力がありません。まず、主人公である駆のサッカーへの情熱が全く伝わって来ません。大して悩んでいる様子もなく、流されるまま後ろを向いている主人公って…ある意味斬新ですが、共感はできませんよね。

 

例えば紅白戦のとき。キャプテンの傑は他の部員を差し置いて強引にマネージャーの駆を起用します。断りきれずヤケクソで引き受けた駆ですが、プレイし出したら何もなかったかのように、しかも普通の選手のように「パスをくれ」「次は取る」といった言動をします。この変わり身の速さについていけません…。

 

また、傑からのパスを起点に決定的な得点チャンスを作りながら、それを逃して交代させられた駆はひどく落ち込みます。これで「やっぱり僕は選手になりたいんだ!」となれば分かるのですが、「やっぱり僕には無理。マネージャーやる」という思考のまま。

 

結局選手になりたいのかなりたくないのか、どっちやねん!と、見ていてイライラします。

 

また、傑にも天才の凄みのようなものが感じられません。演出のせいなのか絵柄のせいなのかは分かりませんが。むしろ凄みを出そうとしているわざとらしさだけが伝わってきて「ふーん」って感じ。

 

と、正直ここまででかなり読む気をそがれています…。ちょこちょこ入るセクハラ要素も不快なだけで笑えませんし。(作者はギャグのつもりなんでしょうが…)しかし、長く続いている作品ですし、高く評価する人も多いようなので、ここから面白くなるかも知れないという淡い希望を持って続きを読んでみます。

 

さて、ある日、2人は交通事故に巻き込まれます。傑は亡くなり、駆は傑の心臓を移植されることで1人助かります。

  

そして、幼馴染のセブンこと美島奈々の励ましと、傑の日記に書かれていた傑の夢、駆と2人でワールドカップに出て優勝することを知って再び選手として復帰することを決意します。

 

…感動的な話のはずなのに、全く響いてこない…。舞台設定が先行しすぎて、キャラクターが意思を持った人間というよりは、作者のコマのように見えてきます。

 

さて、駆が選手として復帰して1年近くがたち、中学最後の試合。技術もスピードも抜群で紅白戦でも毎回ゴールを決めている駆ですが、監督の評価は低く、レギュラーには選ばれていません。

 

…いや、おかしいでしょ

 

他の部員より圧倒的に技術と実績があって努力もしていて、使わない理由がないやん?まーた無理矢理な舞台設定ですよ。ここから何とかして試合に出て監督の評価を覆して「感動!」にしたいんでしょ?なる訳ないやん。逆に白けるわ。

 

で、結局予想通りに話は進みます

セブンが監督に内緒で選手登録していたので試合に出られます!⇒監督「まあいい出してやる」⇒大活躍。

 

優勝候補に3-0で負けていた試合に残り15分で出て2点奪取、ホイッスルがなってからの幻の1点を合わせるとハットトリック

出来すぎですが、まあそこは漫画なので良いでしょう。大歓声とドリブル突破に目を奪われて、敵味方とも誰一人としてホイッスルに気付かなかった…?ま、まあこの際良しとしましょう。

 

引っ掛かるのはこの後です。

 

こんな選手を出さずに試合に負けた監督は責められて当然のはずですが、誰もそこには触れません。中学最後の試合が終わった、なんてしみじみしています。駆は監督に「俺はお前が決めてみせた2点を評価する」と言われて「はい、ありがとうございます」なんて答えてますが、それでいいのか…?

 

そんな釈然としない思いを引きずりながら、物語は次の舞台・高校へと移ります。

駆の中学は中高一貫校だったのですが、「自分が傑の弟だということを誰も知らないところでサッカーをやりたい」と、傑が認めた男・荒木竜一がいる江ノ島高校へ進学します。

 

高校は入学早々から面白かったです。サッカー部サッカー同好会が争って学校代表の座を取り合い、荒木はサッカーを辞めてすっかり太っている上に漫才師を目指しているというカオスな状況。控えめに言って最高

 

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引用元:伊賀大晃月山可也エリアの騎士」4巻 #20 講談社、2007年

 

やがて荒木は同好会に復帰し、サッカー部と同好会の代表戦は引き分けとなります。その結果サッカー部と同好会は統合し、双方の長所を生かした新生江ノ島高校サッカー部として始動することになります。

 

王道のストーリーで先の展開は読めるものの、やはりこういう流れは熱くて良いですね!

荒木という癖のあるキャラクターも登場して、弱かったキャラクターの魅力もようやく出て来た感じもしますしね。

 

さあ、ここから評価が上がるのかな?と期待が高まったのですが…。

ここがピークでした。後は落ちるのみ。

 

なぜか中学の時と同じく、全部員で一番実績を出しながら試合に出られない駆。なんでできない子扱いなんでしょうか。周りが自分より凄い人ばかりだー、って持ち上げた後で、でもそれを上回るんだぜ、って逆転がしたいんですかね?でも試合に出たら大活躍。強敵相手に3-0や4-0でリードされてから駆の活躍で逆転勝利。ひたすらこのパターンの繰り返しでうんざりします。

  

 エースFW(フォワード)だったはずの火野がいつの間にかユーティリティープレイヤーという設定に変わってMFになっていたり、公太が突然俊足だったことになったり、全国的には無名の駆がなぜか五輪代表に呼ばれたりと、ご都合主義も目立ちます。

 

また、選手の特徴が、実際のプレイで見せるのではなく、試合の解説者によるセリフで説明されているのもげんなりします。漫画なんだから、描写で見せてくれよ…。

 

全国大会では、準決勝の対戦相手、鳳凰学園高校が非常に魅力的でした。意識不明のマネージャーの為に苦しくても笑顔で戦うという熱い背景。戦法や個々のキャラクターも主人公サイドよりはるかに魅力的で、むしろこっちが主人公の方がいいと本気で思いました。この試合も、前半は一方的な展開で2-0とリードされます。いっそこのまま勝ってほしかったんですが…。

 

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引用元:伊賀大晃月山可也エリアの騎士」29巻 #249 講談社、2012年

 

後半は例によって主人公補正による理不尽な逆転勝ち。つまらなさすぎる。 

主人公補正で勝ってるだけなのが分かってしまうので、駆が劇的なゴールを決めて喜んでいても感動どころか冷めた目で見てしまうんですよね…。

 

それでもまだ一応読んでみたんですが…。全国大会決勝で、前年優勝校に前半3-0でリードされたとき「ああ、もういいかな」と思いました。ここからまた逆転で優勝するんだろうし、それならこの漫画はこれ以上読んでも何も得られないな、と。 

 

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引用元:伊賀大晃月山可也エリアの騎士」34巻 #288 講談社、2012年

 

はい、予想通り。6-5で江ノ島高校の逆転優勝。全国大会決勝で6-5ですか、そうですか。ドラマチックに見せかけるためだけに、逆転に次ぐ逆転を演出したらこうなりましたって感じ。予定調和で主人公が勝つというだけの結末で、そこに至る説得力が全く感じられません。 

 

ここまでで34巻。全57巻なので、まだ23巻分これが続くのでしょう。

でもさすがに読むのが苦痛になってきましたし、こんなものに時間を使いたくはないのでここまでにします。

 

絵はきれいですし、女の子は可愛いです。良かった点はほぼそれだけかな…。