【ブックレビュー】「ローマ帽子の謎」エラリー・クイーン 評価:☆☆
名作と名高いので、読んでみたのですが…。
訳のせいかも知れませんが、とにかく記述がダラダラと長く、読むのがしんどかったです。
例えば、捜査の中心人物となるクイーン警視が到着して、現場の刑事に死体発見時の様子を訊く場面。
「…それで、そこの床にころがっている気の毒な男はだれなのかね。知っているのか」
ヴェリーはかぶりを振った。「私は死体には手も触れてみないんです、警視」といった。「あなたがおいでになる、ほんの二、三分前に、ここに来たばかりです。四十七番街の巡邏(じゅんら)をしていた男が、交番から電話をよこして、ドイルが呼び子を吹いたと報告してくれたのです。ドイルもなかなかやりおったらしいですよ。…係の警部補から、いい勤務評定がでています」
「ああ」と警視はいった。「ああ、そうか。ドイル。こちらに来たまえ、ドイル」
まず、固有名詞が多すぎ。ヴェリーもドイルもただの現場の刑事で、特に重要な人物ではありません。こういう登場人物が事件現場の封鎖や検証などの描写だけで10人以上も出てきます。
更に、上の文章を読めばお分かりの通り、会話がかみ合っていません。読者も知りたい「死体は誰か」の問いに対して「自分にはこうして連絡が来ました」「ドイルがいい働きをしました」の答え。
そんなことは聞いてねえよ!!
…失礼。まあ、つまるところ、事件も捜査も全く進んでいません。
それにしても、この部下は社会人としての基本ができていなさすぎじゃありませんかね?私が上司なら、1から教育し直す必要を切に感じるところです。
クイーン警視はさらりと流す大人の対応を見せていますが、それじゃ話が進まないんだよ!!
さて、その後もこんな感じでかみ合わない会話が続き、結局被害者の名前が分かったのは11ページ後でした。
被害者の名前が分かるだけで11ページ!!それも、普通に所持品に名前が書いてあるという…。
それを見て名前を確認するまで11ページ。この引き伸ばし能力は逆に凄いわ。現代ならジャ○プの編集者として大活躍していたのでは、と想像してしまいましたよ。
その後もこのペースで捜査は進みます。被害者が飲んでいたジンジャーエールをどうやって手に入れたか聞き取るのに20ページ、出入りした人物がい関係ないなかったか確認するのに10ページ、といった具合。
(その結果分かったのは、殺害の推定時刻と、その前後で人の出入りがなかったという2点のみ。ジンジャーエール売りの若者の恋愛話とか、どうでもええねん!!)
この間、延々と意味のないやり取りがあり、その都度「くすくす笑いをしながら」や「〜な様子で」という副詞が挟まります。 見ただけでくらっと来るような言葉の嵐。これは私の忍耐力が試されているのか!?
そんな文字の暴力にもめげず読み続けたのですが、200ページを超えた辺りでギブアップ。もう無理です、ごめんなさい。
という訳で、後は斜め読みで飛ばしまくりました。そこで分かった驚愕の事実。
斜め読みで十分ついて行ける。
本格推理小説とは一体…。
まあ、10ページに1行ぐらいしか進展がないから当然と言えば当然なんですが。
やがて、手掛かりが出揃ったところで「読者への挑戦」として、作者から犯人と殺害方法を問われます。試みとしては面白いと思います。でもですね。
どうでもいい描写が多すぎて、肝心なところが頭に入ってないよ!!!
残念ながら、推理する気にもなれませんでした…。
本作は大作家エラリー・クイーンのデビュー作であり、「国名シリーズ」の第一作目でもあります。
文学史的な意味は大きいのでしょうが、一冊の作品としてはおすすめできません。
読むなら最近のミステリーの方がはるかに面白いです。
amazonで中古で1円ですが、それでも買う価値は無いかと。少なくとも私はタダでもいりません…。